桑田佳祐が影響を受けた洋楽アルバム10選|サザンオールスターズのルーツを辿る

楽曲解説・考察

桑田佳祐は、サザンオールスターズの中心人物として、日本のポップロックを牽引してきた存在。その音楽性には、洋楽やロック、ブルースなど幅広い影響が色濃く表れている。

本記事では、2017年発売の『Pen特集号「1冊まるごと、桑田佳祐。」』をもとに、彼が影響を受けた洋楽アーティストを紹介し、そのルーツと楽曲とのつながりを紐解く。

※詳細が気になった方は、是非『Pen特集号「1冊まるごと、桑田佳祐。」』を中古市場から探して欲しい。


Waiting for Columbus / Little Feat(1978年)

サザンに色濃い影響を与えた、いとしのリトル・フィート

リトル・フィートは、アメリカ出身のロックバンド。R&Bやブルース、カントリー、ロックンロールといったアメリカン・ルーツ・ミュージックの要素を融合したサウンドを特徴とする。その独特のグルーヴやスライドギターのプレイスタイルは、サザンオールスターズにも大きな影響を与えている。

1969年結成のアメリカのロックバンド。78年のライブを編集、同年にリリースした2枚組アルバム。ジャケットデザインもいい。

Pen 2017年 No.435「1冊丸ごと、桑田佳祐。」

とりわけ桑田佳祐にとっては特別な存在であり、「いとしのフィート」「悲しみはブギの彼方に」といった楽曲にも、その音楽的影響が色濃く表れている。本人もたびたびラジオで、ローウェル・ジョージ(スライドギター/ヴォーカル)在籍時の下記アルバムを愛聴盤として挙げており、音楽ルーツを辿るうえで欠かせない存在といえる。

✔️ 『Dixie Chicken』(1973年)
✔️ 『Feats Don’t Fail Me Now』(1974年)

『Waiting for Columbus』を聴いてから初期サザンに戻ると、単に「いとしのフィート」というタイトルだけでなく、ブルースやR&B、カントリーなどを混ぜ合わせた独特のグルーヴにも、リトル・フィートとのつながりを感じます。

さらに桑田佳祐は、1997年にローウェル・ジョージのトリビュートアルバムへ参加し、「Long Distance Love」をカバーしています。若い頃に影響を受けた一過性の存在ではなく、その後も長くリスペクトし続けてきたアーティストであることが分かります。

個人的には、デビュー前に生まれた「悲しみはブギの彼方に」などと聴き比べてみると、海外のルーツミュージックをそのまま模倣するのではなく、“サザンの音”へと咀嚼していく原点が見えてくるように感じます。


The Slider / T. REX(1972年)

グラムロックは、桑田佳祐が愛してやまないロックジャンルのひとつ。

中でも、その代表的な存在といえるのがT. Rex(ティー・レックス)。独特の妖しさと煌びやかさを併せ持つサウンドやルックスが印象的。

1972年にリリースされた、グラムロックを象徴するアルバム。「テレグラム・サム」「メタル・グルー」(ともに全英1位)収録。

近年では、サザンオールスターズの楽曲「夢の宇宙旅行」について、桑田佳祐本人が下記のように明言しており、グラムロック含む、その趣味性と音楽的リスペクトが色濃く表れたナンバーとなっている。

これまでの僕の音楽人生の中で、グラムロックやパワーポップブリティッシュ・ロックに対する「リスペクトの集大成」だとも言えます

「サザンオールスターズ よむ “THANK YOU SO MUCH” 展」Liner Notes — 09「夢の宇宙旅行」より

T. Rexの音楽を聴いて印象的なのは、骨太なロックでありながら、どこか妖しく、キャッチーで、ポップでもあること。その感覚は、さまざまなジャンルをエンターテインメントとして成立させる桑田佳祐の音楽にも通じるものがあります。

実際、桑田佳祐は1991年の「KEISUKE KUWATA ACOUSTIC REVOLUTION」で、本作収録の「Telegram Sam」をカバーしています。そして時を経た2025年には、サザンの「夢の宇宙旅行」でグラムロックやブリティッシュ・ロックへのリスペクトを表現しました。

『The Slider』と「夢の宇宙旅行」を続けて聴いてみると、桑田さんが若い頃に吸収した洋楽の趣味性が、何十年もの時を経ても現在のサザンに息づいていることが感じられます。


Harvest / Neil Young(1972年)

ニール・ヤングも、桑田佳祐が長年リスペクトしてきたアーティストのひとり。
TOKYO FM「桑田佳祐のやさしい夜遊び」を聴き続けていると、彼の代表曲「Heart of Gold」が定期的に流れている。まさに桑田佳祐の“心の1曲”といっても過言ではなく、音楽性を形成するうえで少なからず影響を与えた楽曲だと思う。

1972年リリースのニール・ヤング4枚目のソロ・アルバム。全10曲中7曲がナッシュビルで録音。全体的にカントリー調の雰囲気を醸す。

また、1991年に開催されたライブ「KEISUKE KUWATA ACOUSTIC REVOLUTION」では、この「Heart of Gold」をカバーして披露。桑田佳祐の洋楽ルーツが凝縮されたファン必見のステージなので、要チェック。


Ram / Paul & Linda McCartney(1971年)

桑田佳祐が「世界で一番好きなアルバム」と公言している作品

「ジョン・レノン派か、ポール・マッカートニー派か?」――これは世界中のロックファンが一度は交わす定番の問いだが、桑田佳祐はインタビューやラジオでたびたび“ポール派”であることを公言している。そんな桑田が「世界で一番好きなアルバム」と言及することもある一枚が、こちらだ。

「ビートルズは解散後にリリースされた各々のソロ作品が自分にとっての同時代体験。特にポールの『ラム』は確実に1000回以上聴いています。(桑田)

Pen 2017年 No.435「1冊丸ごと、桑田佳祐。」

『Ram』を聴いていると、美しいメロディだけでなく、重ねられたコーラスや遊び心のあるアレンジ、一曲の中で次々と表情を変えていく自由さが印象に残ります。

桑田佳祐がこのアルバムを「1000回以上聴いた」と語っていることを踏まえると、サザンの楽曲に見られる、ひとつのジャンルだけには収まらない発想にも通じるものを感じます。

もちろん、特定のサザン楽曲が『Ram』から直接生まれたと断定することはできません。ただ、洋楽の要素を吸収しながら、ポップスとして楽しく聴かせる桑田さんの感覚を考えるうえで、この一枚は非常に興味深い存在だと思います。


Disraeli Gears / CREAM(1967年)

桑田佳祐が幾度もカバーしてきた「Sunshine Of Your Love」を収録した名盤

2曲目「Sunshine Of Your Love」は、「KEISUKE KUWATA ACOUSTIC REVOLUTION」や「Act Against AIDS ’99 桑田佳祐 エリック クラプトソ横浜公演」などでたびたびカバーされている、桑田佳祐にとって馴染み深い楽曲。

また、サザンオールスターズの「SEA SIDE WOMAN BLUES」は、本アルバム9曲目「Outside Woman Blues」をもじったものだと、桑田さん自身が明言している。

イギリスのロックバンド、クリームの2枚目のアルバム。1967年にリリースされ、英国のアルバムチャートで最高5位を記録した。

桑田佳祐とCREAMの関係は、10作品の中でも特に分かりやすいものがあります。「Sunshine Of Your Love」をライブで幾度も取り上げているだけでなく、サザンの「SEA SIDE WOMAN BLUES」というタイトル自体も、本作収録の「Outside Woman Blues」をもじったものであることを桑田さん自身が明かしています。

興味深いのは、「SEA SIDE WOMAN BLUES」がCREAMそのもののような楽曲ではなく、江ノ島を舞台にした日本的な“歌謡曲”として完成していることです。

海外のブルースやロックをそのまま再現するのではなく、そこへ日本語や歌謡曲、湘南の風景を掛け合わせて自分たちの音楽にしてしまう。この変換こそ、桑田佳祐の音楽を聴く面白さのひとつなのだと思います。


Endless Summer / The Beach Boys (1974年)

桑田佳祐が大好きな楽曲として、ラジオでもたびたびオンエアされるビーチ・ボーイズの「Don’t Worry Baby」。「KEISUKE KUWATA ACOUSTIC REVOLUTION」でも、25曲目にこの曲が演奏されている。

美しいコーラスワークとカリフォルニアのイメージが印象的なこの曲だが、サザンオールスターズもまた、同様にハーモニーと“海”のイメージを持つバンドであり、ビーチ・ボーイズからの影響を強く感じさせる。

1974年リリースのベスト・アルバム。「エンドレス・サマー」は、映画「アメリカン・グラフティ」の上映により日本でも大ヒット。

Beach Boysとサザンオールスターズを並べて聴くと、単に“海のイメージを持つバンド”という共通点だけではないことに気づきます。美しいコーラスワークや親しみやすいメロディ、そして海辺の日常や青春をポップスへ変えていく感覚にも、どこか重なるものがあります。

桑田佳祐は1991年の「KEISUKE KUWATA ACOUSTIC REVOLUTION」で、本作にも収録されている「Don’t Worry Baby」をカバーしています。

もちろんサザンはBeach Boysの日本版ではなく、そこに歌謡曲や日本語独特の言葉遊び、時には都会的な哀愁まで加わります。両者を聴き比べると、海外の“海辺のポップス”を桑田佳祐がどのように日本独自の音楽へ昇華してきたのかを考えるきっかけにもなります。


E.C. Was Here / ERIC CLAPTON(1975年)

1975年にリリースされたクラプトンのライブ・アルバム。クラプトンはもちろん、ジョージ・テリーのギターテクニックも話題を呼んだ。

『E.C. Was Here』は、スタジオ作品以上に、クラプトンのギターと歌が生々しく感じられるライブアルバムです。

桑田佳祐は1999年の「Act Against AIDS ’99 桑田佳祐 エリック クラプトソ横浜公演」で、本作にも収録された「Further On Up The Road」を演奏しています。アルバムを愛聴するだけでなく、実際に自身のステージでその楽曲を取り上げている点からも、クラプトンが桑田さんのギタリスト/ボーカリストとしてのルーツのひとつであることが伝わってきます。

桑田作品とのつながりを探すなら、特定の楽曲を似ている・似ていないで比べるよりも、ブルースを土台にしながら、歌とギターを一体化させて観客へ届ける“演奏者としての姿勢”に注目すると面白いと思います。


Tapestry / Carole King(1971年)

1971年リリース。全米で15週連続1位を獲得。このアルバムは全優秀女性ポップボーカルなど、4つのグラミー賞も獲得している。

『Tapestry』には、派手なサウンドよりも、ピアノと歌、そして何よりメロディと歌詞そのものの力で聴かせる楽曲が並んでいます。

桑田佳祐の作品に、そのままCarole Kingと結びつけられる一曲があるというより、個人的には“ソングライターとして歌を成立させる力”に共通点を感じます。桑田さんも、豪華なバンドサウンドからシンプルなバラードまで幅広く手掛けますが、アレンジを取り払ってもメロディだけで記憶に残る曲が非常に多いからです。

『Tapestry』は、桑田佳祐がロックやブルースだけでなく、“優れたポップソングを書くこと”そのものからも影響を受けてきたことを考えるうえで興味深い一枚です。


The Concert For Bangladesh / George Harrison

1971年のジョージ主催のチャリティコンサート。豪華ゲスト陣が参加。「僕が初めてボブ・ディランの歌を聴いたアルバム」(桑田)

Pen 2017年 No.435「1冊丸ごと、桑田佳祐。」

このアルバムについて特に興味深いのが、桑田佳祐が「初めてボブ・ディランの歌を聴いたアルバム」と語っていることです。本作には「Blowin’ In The Wind」や「Just Like A Woman」など、ディラン本人によるパフォーマンスも収録されています。

その後、桑田さんは1991年の「KEISUKE KUWATA ACOUSTIC REVOLUTION」で「Blowin’ In The Wind」「The Times They Are A-Changin’」を、1998年のライブでは「Just Like A Woman」をカバー。さらに2025年の「九段下フォーク・フェスティバル」でも「風に吹かれて」を披露しています。

そう考えると『The Concert for Bangladesh』は、単なるジョージ・ハリスンの愛聴盤というだけでなく、桑田佳祐とボブ・ディランをつないだ“入口”ともいえる一枚。後の音楽人生まで辿ってみることで、このアルバムを選んだ意味がより立体的に見えてきます。


Live Peace / The Plastic Ono Band

1969年のライブ盤。「エリック・クラプトン、ジョン・レノンらが飛行機の中で打ち合わせしてリハーサルなしで演ったライブ」(桑田)

Pen 2017年 No.435「1冊丸ごと、桑田佳祐。」

『Live Peace in Toronto 1969』は、ジョン・レノン、エリック・クラプトンらが急遽集まり、飛行機の中でリハーサルをして本番に臨んだという、ロックならではの勢いがそのまま刻まれたライブアルバムです。

きれいに作り込まれた演奏とはまた違う、ステージ上で音楽が生まれていくような生々しさがあり、桑田佳祐がこの一枚を愛聴盤に挙げているのも興味深く感じます。

桑田さん自身も後年、ビートルズ楽曲だけを中心に構成したライブを行い、「Mother」「Imagine」「Woman」などジョン・レノンのソロ作品もカバーしています。作品を聴き比べると、完成されたポップスを作る一方で、ライブではロックンロールの衝動や即興性を大切にする桑田さんの一面にも、ジョン・レノンから連なるルーツを感じることができます。


📌 出典・参考データ

  • Pen No.435「1冊まるごと、桑田佳祐。」(2017年)|桑田佳祐のルーツとなったレコード・音楽的影響に関する特集
  • サザンオールスターズ Official Site|「KEISUKE KUWATA ACOUSTIC REVOLUTION Live at Nissin Power Station 1991.3.26」
  • サザンオールスターズ Official Site|桑田佳祐インタビュー・楽曲解説
  • サザンオールスターズ/桑田佳祐 Official YouTube

※本記事では、上記資料を参考にしながら、筆者自身が各作品を聴いて感じた音楽的な共通点や、サザンオールスターズ・桑田佳祐作品とのつながりについて独自に考察しています。


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