【楽曲解説】映画『盤上の向日葵』主題歌「暮れゆく街のふたり」―桑田佳祐の文学的モダン歌謡

楽曲解説

本記事では、映画『盤上の向日葵』主題歌として注目を集めている、サザンオールスターズによる「暮れゆく街のふたり」について、その背景・制作・歌詞・受け取り方といった観点から解説していきます。


「暮れゆく街のふたり」楽曲解説

楽曲情報

映画『盤上の向日葵』の主題歌。サザンにとっては7年ぶりの映画タイアップ曲。

「暮れゆく街のふたり」は、2025年公開映画『盤上の向日葵』の主題歌として起用された楽曲で、サザンオールスターズにとっては 7年ぶりの映画主題歌 となりました。
映画公式サイトでは「切なさに満ちた一曲」と紹介されており、物語の情感に寄り添う主題歌として大きな反響を呼んでいます。

映画『盤上の向日葵』は、柚月裕子氏による同名小説を原作としたヒューマンミステリー。
監督・脚本は熊澤尚人、主演に坂口健太郎、共演に渡辺謙らが名を連ね、2025年10月31日に全国公開されました。

サザンが映画主題歌を手がけるのは、2018年『空飛ぶタイヤ』の「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」、同年公開『ビブリア古書堂の事件手帖』の「北鎌倉の思い出」以来。
彼らの47年超のキャリアにおいて、映画タイアップは意外にも7作目という貴重な事例でもあります。


収録アルバム・リリース情報

サザン16作目のオリジナルアルバム『THANK YOU SO MUCH』に収録。

「暮れゆく街のふたり」は、サザンオールスターズが 11年ぶりに発表した16作目となるオリジナルアルバム『THANK YOU SO MUCH』 に収録。
2025年3月リリースの同アルバムには、「恋のブギウギナイト」「ジャンヌ・ダルクによろしく」など、幅広いテイストの楽曲が収録されています。

その中で本楽曲は、もっとも陰影や情緒を湛えた“モダン歌謡”として際立っており、2025年1月から始まった同アルバム引っ提げたサザンオールスターズのツアーの中でも演奏されています。


楽曲制作背景

昭和風情が残る「香み屋街」のドキュメンタリー番組が元のイメージとなった。

「暮れゆく街のふたり」が生まれたきっかけは、桑田さんが NHK「ドキュメント72時間」を観ていたことに遡ります。特に、昭和の風情が色濃く残る“呑み屋街”を舞台にした回に強く惹かれたといいます。

雪がうっすらと残る路地、夜の道路を照らすスナックや看板のネオン、そして少ないながらも行き交う人々――。人影はまばらでも、そこにいる一人ひとりに“事情”がある。桑田さんは、そうした光景を目にしたことで、この曲には“最初から具体的なイメージがあった気がする”と語っています。

さらに、「凍(しば)れる」ような空気の中にも、どこかに残る“温もり”や人々のささやかなやり取りが印象的だったとのこと。こうした情景や感情が重なり、楽曲の歌詞やノスタルジックな世界観が形づくられていったと考えられます。

「日本人の感情って、基本的には「ネガティブ」だと思うんですね。決して「陽気」な民族ではなく、涙とか哀れのようなものを好むでしょう?私自身がモロにそれを意識するのはこういう曲を作っている時の自分で、妙に高揚する瞬間ですね。」

桑田佳祐 コメントより

楽曲制作環境

桑田佳祐の自宅地下にある「猫に小判スタジオ」で制作を実施。

レコーディングは、通常使用しているビクタースタジオではなく、桑田佳祐の自宅地下にあるプライベートスタジオ「猫に小判スタジオ」で行われました。暗くて狭い空間で、まるで“自分の内面と向き合うように”作業が進められたとのこと。

その「修行」「精神修養」と言えるようなストイックな制作過程が、楽曲全体に今回のような楽曲の雰囲気に呼び込んだのかもしれない――と本人は振り返っています。


楽曲制作メンバー

桑田さんが主導となりつつ、片山敦夫さんも編曲する形で楽曲が完成しました。

  • 作詞:桑田佳祐
  • 作曲:桑田佳祐
  • 編曲:サザンオールスターズ & 片山敦夫
  • 管編曲:片山敦夫

歌詞・考察

歌詞の内容としては、ノスタルジックな情景描写とともに、男女の切ない関係性・時間の経過・街の“暮れゆく”風景を背景に、二人の心の機微が浮かび上がるような世界観が描かれています。

▶︎「暮れゆく街のふたり」歌詞

例えば、街の黄昏(たそがれ)感、ふと交差する視線、残された時間の重さ——そういったモチーフが、桑田佳祐ならではの“歌う物語(リリック・ストーリーテリング)”の中に織り込まれており、単なるラブソングとは一線を画す“文学性”が感じられます。

歌詞全文を掲載することは著作権の関係で控えますが、ギター弾き語りカバーや譜面も出回っており、ファン間でも歌詞の言葉選びに注目が集まっています。


その観点から、私個人としてこの楽曲を聴いた際には、 “夕暮れの街角、別れと再会、あるいは別れゆく二人”という情景が頭に浮かび、時間の経過とともに刻まれた感情の重さが声・メロディ・アレンジの隅々に宿っていると感じました。まさに“街が暮れてゆく”その中で「ふたり」がどう変化し、どう佇んでいるのかを歌っているように思えます。

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