【コラム】桑田佳祐がラジオとライブで届けた“音楽愛”の結晶。「九段下フォークフェスティバル’25」——ラジオから生まれた奇跡の夜

レポート

今回の「九段下フォークフェスティバル’25」は、桑田さんのキャリアの中でも、ラジオと音楽が交差した“新たな基軸”となるような夜だった。
音楽への愛、仲間たちへのリスペクト、そしてラジオを通じてつながってきたファンとの絆、そのすべてが詰まったイベントだったと感じている。

本記事では、TOKYO FM開局55周年×「桑田佳祐のやさしい夜遊び」放送30周年記念イベントに、リスナー・ライブレポーターとして参加した筆者が、TOKYO FMに寄稿したレポートをもとに、ラジオとその夜の記憶をコラムとして綴っていく。


ラジオから始まった、僕の“桑田佳祐”

今現在28歳の僕が桑田さんの音楽に出会ったのは、両親の影響ではなく、ラジオからだった。
『やさしい夜遊び』を通して聴いたサザンや、ビートルズを始めとするブリティッシュロック、ブルース、歌謡曲、そして今回テーマになったフォーク。
その幅広い選曲に触れながら、音楽の素晴らしさや魅力を少しずつ知っていき、桑田さんの楽曲をはじめとする多くの音楽が、僕の心の拠り所になっていった。

そして、ラジオの中の桑田さんは、特別気取ることもなく自然体で、時に乱暴だったり、下ネタも言うけれど、そのジョークの裏には、いつも人への優しさや温かさがあふれていた。

高校時代、『やさしい夜遊び』の「いいかげんに1000回!! ファンやめたるわ!! 生歌ライブ」の音源がTFMで流れた日。僕は実家の小さな部屋で、ラジオ越しにライブ音源を聴きながら、一人で興奮していた。あの時の熱が、今でも胸に残っている。
それから10年以上が経ち、ついに“日本武道館”という会場で、その原点に触れられたことは、僕にとって感慨深い瞬間だった。


フォークの夜に仕掛けられた“ロックなサプライズ”

「九段下フォークフェスティバル’25」を待ちに待った僕は、桑田さんの歌を心待ちにしていた。
ラジオでもお馴染みの住吉美紀さんによるMCから始まり、桑田さんが見出した田内洵也さんによる「深川のアッコちゃん」で、早くも会場のボルテージは上がっていく。
ラジオで何度も聴いてきた吉田拓郎の唄から、桑田さんのソロ曲「明日へのマーチ」へと続き、テンポのいいサウンドに包まれながら、会場の熱気は次第に高まっていった。

2曲目が終わりいつも通りMCに入ったものの、少し落ち着かない、いつもとは異なる空気が桑田さんが漂う。そのMCで「フォークしかやりません」と宣言した桑田さんの言葉に、観客は笑いながらも「本当に?」と半信半疑。

そして、桑田さんが意味深に言った。
「……だから、君はロックを聴かない。」

会場が一瞬ざわめいた次の瞬間、聞き覚えのあるイントロが——。
まさかの「君はロックを聴かない」。

登場したのは、あいみょん。
桑田さんがコーラスに加わると、武道館は一気に熱狂の渦に包まれた。

その後も“ロックなサプライズ”は続いた。

Mr.Childrenの桜井和寿、サザンオールスターズの原由子、THE YELLOW MONKEYの吉井和哉と、次々に豪華ゲストがステージに登場。
「奇跡の地球」「花咲く旅路」「みらいのうた」……フォークの枠を超え、時代と世代をつなぐコラボレーションに、客席は歓声に包まれた。

桑田さんやラジオを通して、好きになっていった数々の楽曲が、本人とともに目の前で奏でられている。その光景は、夢のようだった。
桑田さんが好きな曲は勿論、桑田さんやゲストの方が互いにリクエストした好きな楽曲も次々に披露され、まるでラジオをリアルな場で聴いている気分。
「ラジオと音楽を聴き続けてきて本当によかった」そう感じる瞬間だった。

そして、ゲストやファンへの温かさがあふれるコンサートの中で、
自分の原点を感じながらも、新しい試みを続ける桑田さんの姿に、強く胸を打たれた。


竹内まりやが語った“涙のキッス”の記憶

終盤で登場した竹内まりやさんのMCも印象的だった。


「けいちゃんがね、大変な病気をして手術をすることになった時に、私、スーパーマーケットで野菜を買おうとしていたんです。有線でけいちゃんの曲がかかった時、もう泣けちゃって…。この人は絶対に無事に帰って、歌い続けてほしい―って思った曲を今日やろうと思います」

と語ったその言葉に、客席からも静かな共感の空気が広がった。
そして披露された「涙のキッス」。

桑田さんとまりやさんのハーモニーが重なった瞬間、会場中が多幸感に包まれ、これ以上ない幸福な空間になっていた。
まりやさんは、「けいちゃんの人徳」と語っていたが、そんな桑田さんを想っての歌にも聴こえて、ファンの心に深く染み渡っていったと思っている。なぜかというと、会場に集まったファン・リスナーが同じように、桑田さんのことを想っていた時期もあって、共感できるからだ。

その会場全体の共感と、二人の歌声があったからこそ、この夜の“ベストアクト”と言っても過言ではない、圧倒的な名演だった。

本編ラストの「静かな伝説(レジェンド)」では原由子さんも登場し、改めて桑田さんの音楽の広がりと人のつながりを感じるステージとなった。

アンコールの最後、ゲストが全員去ったあと、ライブの締めくくりにふさわしい、勢いの中にも切なさを感じるあのイントロが流れる。「祭りのあと」だ。
桑田さんは一音一音を噛みしめるように歌い、観客は総立ちで手拍子を送り続けた。
サビのウェーブが会場の一体感と、終わってしまうことへの名残惜しさを包み込みながら、「九段下フォークフェスティバル」は大きな拍手喝采とともに幕を閉じた。
あの瞬間、“桑田佳祐とラジオと僕”のすべてがつながった気がした。


ラジオと音楽が交差した桑田佳祐の“新たな基軸”

「九段下フォークフェスティバル’25」は、ただの音楽イベントではなかった。
それは、ラジオから始まった物語の“続き”であり、ラジオと音楽が交差してできた僕自身の原点をもう一度照らしてくれた夜だった。

音楽と、言葉と、そして人とのつながり。
桑田佳祐という存在が、そして『やさしい夜遊び』という場は、なぜ何十年も愛され続けるのか、その答えが、確かにここにあった。

今回の「九段下フォークフェスティバル」は、桑田佳祐さんのキャリアにおいて新たな基軸となる、まさに伝説的な一夜だったと感じる。
長年にわたり第一線を走り続けてきた桑田さんにとって、このような特別なイベントを開催すること自体、決して容易なことではないはずだ。
それでも今回のステージでは、音楽の原点に立ち返るような温かさと、桑田さんの挑戦する姿勢もあふれていた。

今後も、「九段下フォークフェスティバル」のように、桑田さんの音楽の魅力を改めて感じられるイベント、そして、僕と音楽を繋いでくれた『桑田佳祐のやさしい夜遊び』が続いていくことを願っている。

桑田さんの紡ぐ音楽の力と、その場に生まれる一体感が、再び新たな伝説を生み出していくに違いない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました